永年、医療・福祉建築の仕事に携わってきていろんな想いがあります。 病院設計専門の内藤建築事務所に入社した時、事務所創立者から直に言われた言葉 『柳くん、お客様のお金を一銭たりとも設計者のエゴで無駄にしてはいけないよ!』…忘れません。 神より撰ばれし「建築家」とは別の、社会における「役割」があると思います。 建築士倫理に則り、建築主(お客様)の利益を守るのも役割の一つです。 この場合の利益とは、適正な事業予算のコントロールやそのお客様の建物が「社会資産」として地域社会からの評価を得られるかということだと考えます。 |
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医療・福祉建築では、スタッフにとって無駄な動きがない諸室のレイアウトが求められます。これを建築用語で「良い動線」といいます。それによって生じる「ゆとり」が患者・利用者様に対しての思いやりのあるケアにつながります。そうして「使う人が主役」の良い建物の評価を得ます。事業計画段階ではコンセプト・予算・目的(何のために)を院長・理事長様としっかり共有し、設計段階では「主役」と「働くスタッフ」を見据えて取り組みたいものです。設計者の目的は、院長・理事長様・働くスタッフが「この病院・施設で良かった」と利用者ご本人・ご家族様からのお言葉をいただくことです。将来に亘って地域社会で必要な存在になっていただくことが喜びです。 |
またもや認知症グループホーム火災でお年寄りが犠牲になりました。長崎県でのできごとです。その後の調べで、多くの消防法、建築基準法違反が判明しました。
最低限の決めごとが法律であり、我々は建築士倫理に則って、まさかの時、煙にまかれず避難できる「簡単明瞭な」廊下と避難口をプランします。
スプリンクラーも有用ですが、初期避難活動は「平面プラン」により担保されます。火災は夜間に発生しがちです。
少ない職員で対応するには、取りあえずバルコニーなど「一時避難場所」に出し、救助を待つことです。煙にまかれない設計を第一に考えたいものです。
イニシャルコスト(初期投資)は事業収支予測ができます。工事予算は「○○までは大丈夫」と計算可能です。他業種と違って医療・福祉業界の収入は職員がいくら頑張ってくれても予測を大きく上回ることはありません。
光熱費、特に照明・冷暖房・換気にかかる費用は窓の配置・風の通り道を配慮したプランでかなり抑えられます。
私は「天然の木」をできるだけ随所に使うようにしています。障がい者施設・高齢者施設・お年寄りが多い教会など厚さ3センチの杉板を床に張りました。
冬の朝でも冷たくありません。お日様が当たると蓄熱してエアコンが要らなくなるくらいです。こんな建物がコスト的にも良い建物です。
ランニングコストさらにライフサイクルコストの視点で、初期投資で許せる限り使用材料なども選定しています。
不動産上の耐用年数と医療・福祉建築のニーズとは必ずしも同じではないと気づいて以来、それまで当たり前だった鉄筋コンクリート造(RC造)から鉄骨造へシフトしています。
鉄骨造なら、屋根・外壁も含めて全く異なる用途への転換可能な「リ・ユース」が容易だからです。
病室・居室の広さも少し広くなってきました。
鉄骨造はRC造に比べ柱間隔を長くできるのが特徴です。
RC造、鉄骨造それぞれに長所短所ありますが、鉄骨造ならではのノウハウも病院建築では3件生かされています。
詳しくはお問い合わせフォームでお尋ね下さい。
長くスクラップアンドビルドを繰り返してきた日本の建築業界は、今、大きな転換期にあります。
建物は基礎や柱梁などの主要構造部を丈夫に作っておけば、前に述べたように使い続けることが可能です。
特に住宅業界においては、狭い土地に二世代しか住めない小さな家を安く作って大量に供給して来ました。
世代ごとに作り替えているのが大半です。
(詳しくは「3世代住宅のすすめ」をご覧下さい)
物は大事に長く使い続けることが、その物に生命が宿りお客様たちの事業に貢献してくれると信じます。
住まいにおいては、「家風」「家訓」「知恵の伝承」の人間形成の上でとても大事な役割を果たします。物は生きています。
感謝の心を持ち続け、建築の仕事を通じ社会に貢献できる生きがいを持ち続けます。
~ひとの喜び わが喜びに~